「漫画を描くためのヒント」by 土谷重美さん

① まず、写真を何枚か撮ります。写真を向けると皆構えてしまって添付の様なポーズになるので、できるだけ自然なショットを得るために、カメラを構えずに隠し撮り風にシャッターを押します。当然、顔半分しか映っていないものもありますので、「沢山」撮る訳です。

②先生の話を聞いている風にまとめました。目の玉は、先生を向く様に多少動かしています。

     

③ 中国のアニメ製作所を訪問、手法や道具を教わりました。次の漫画チックな絵は中国のアニメータが描いたものです。影等はセオリーに沿って機械的に付けます。

 

アニメ制作と言うのは、どの様に仕上げたいか、監督(宮崎駿の様な人)がシーンの代表的な場面をラフスケッチします。(背景、周辺の道具類、キャラクターの顔や服装など)

これを背景画を描く人は、細部まで描いて遠近感が出るように色付けします。(背景のレイヤー)

場面によって有ったり無かったりする道具類もそれなりに。背景に合わせて光の方向に合った影を付けて。(中間レイヤー)

常に動くキャラクターは、監督の指示通りの人物を描いて、これをコピーし、喜怒哀楽の表情だけ変えた絵を沢山作ります。(一番表面のレイヤー)

例えば目尻を下げて唇の両端を上げれば笑っている表情になります。

これに手足の動きを加え、背景画の前で位置を変えながら、何枚も撮り、パラパラ漫画の様にすれば動いているアニメが出来上がります。

位置や時刻を考えながら影を入れれば、現実感が増します。実際、彼女達の影の付け方は機械的で影の濃淡までは気にしていない様でした。

つまり、「写真とは違う何か」は何なのか。同じ風景を見ても写真で見た時の印象と、それを漫画チックに仕上げったときの印象は天と地ほど違います。似顔絵を見た時に真っ先に感じるのは「やさしさ」や「ほのぼのとした感じ」はそこにあるのではないかと思います。

写真では、目的に焦点を合わせて撮るようになっていますので、遠近感が強く出過ぎる。前の人はあまりにも大きいし、後ろの人はあまりにも小さい。全員が主役になってもらうために、若干は遠近感を持たせながら鳥観図風に配置します。

写真で全体をとっても一瞬のシーンですが、漫画では当該人物が楽しんでいるシーンを選び出して配置するので、皆が楽しんでいる風な場面が作れるのです。一人だけイイ顔が有っても構図が作れない時には没にせざるを得ませんし、数を数えながら全員が収まる構図を作らなければなりません。

構図の上では、複数人の関係が大切で、盛り上がっている様なポーズを探してこれを組み合わせ、画面に配置します。この為に写真を左右反転して無理やりグループに参加させることもありますし、視線や口元の上がり方も細工して何とかグループの中が同じ話題で盛り上がっている風を意識します。

背景は、皆が覚えているだろう部屋のつくりを人物の配置と矛盾しない様に描き込みます。遠近法を意識すれば広い部屋になったり、こじんまりした部屋になったり…。照明やのれん等もその場のムードを出すためにそれらしく配します。照明は、お絵かきソフトの消しゴムを使って最後に色を落とせばそれらしくなり、大事な小道具です。

最後の文字は、お絵かきソフトでは使える書体が少ないので、Windowsのペイントを使って書き加えます。全体の大きさとバランスをとってフォントのサイズや色を決めています。
良い作品を作ろうと思えば、スナップショットを沢山撮ることです。

土谷重美

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